国民的スポーツとして愛されている野球。
その野球のグローブが、ひと昔前、奈良県の小さな町とその周辺で
全国の9割近くも作られていたことをみなさんはご存知でしょうか?
野球へのこだわりが強い筆者とその息子は、
この町で作られたグローブをいくつも愛用していました。
野球グローブの聖地と呼ばれるこの町の発展と衰退そして未来をレポートします。
1.地域産業の空洞化
<社会課題>
- 日本の手工業的生産形態をとる地域の企業は、大手国内メーカーの下請け製造拠点であったが、近年、事業の継続が難しく、地域は雇用や税収の減少に陥っている。
- 低価格の輸入品との競合の為、メーカーは製造拠点を海外に移行。地域の製造企業は資本力が弱く、技術者の高齢化や後継者不足により、事業継続が難しい。
- 地域経済を支える製造業の弱体化は地域の産業の衰退を招き、人件費の安い海外への工場移転は産業の空洞化を引き起こす。結果として地域だけでなく日本全体の経済力を低下させる。
2.野球グローブのオリジナルブランドで活性化
<解決事例>
- 奈良県の三宅町はグローブが名産で、1970年に国内シェア60%、近隣の町と併せて90%まで発展。その後ドルショックやオイルショックで安価な韓国や台湾が台頭し、町工場は120件から十数件に減少。
- 下請けを継続しながら、同時に、各工場がオリジナルブランドを立ち上げ、高品質、高デザインなグローブを国内向けに販売を開始。細部にまでこだわるオーダーメイドが好評となった。
- 野球ファンは多いが、少年野球(学童野球チーム)の実施率は、2009年34.8%から2021年14.6%へ大幅減少。底辺での野球離れが深刻化する中、国内だけをターゲットにするのは危険だ。
3.「海外でつくる」ではなく「海外に売る」へ
<企業展望>
- 少子化問題は深刻であり、加えてスポーツは多様化。たとえ野球を選んでも子供たちがキャッチボールすら楽しむ場所が少ない。必然的に親もチーム内での当番頻度が上がるなど負担が懸念される。
- 地域の産業や経済が、国内のプレー人口の減少に比例しないように、海外の市場に高く売れること、つまり海外でも細やかな技術・品質が買われることが理想である。
- 本来メーカーは海外の展示会や見本市のイベントに積極的に取り組むことが求められる。資本力が弱い町工場は、SNS発信やAIによる英語対応等、海外進出のチャンスに対応していく事が大事である。
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